hon de honwaka

一期一会の本と日常のおはなし

休日にじっくりと

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9月最初の日曜日。今朝は一面曇り空。

今日の一冊は、

「 エセルとアーネスト ふたりの物語 」  (バベルプレス 2019年8月発行)  著者 レイモンド・ブリッグズ  訳 北川 静江

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本の内容は…

英題は「Ethel & Ernest a true story」、著者の母と父を描いた実話です。身内の方の話ですが、けっして美談ではなく、ありのままに両親の人生を描いています。

舞台は1928年から1971年のロンドン、第二次世界大戦もあった激動の時代です。夫婦の出会いから、その生涯を終えるまでの43年間が、時代の変化とともに語られます。

日々の暮らしの小さなよろこびや些細ないざこざから、恐ろしい戦争に飲み込まれていく様と大きな悲しみまでが、コマ割りされた漫画風のイラストと夫婦の会話を中心に描かれています。

著者のプロフィール…

著者のレイモンド・ブリッグズはイギリスのイラストレーター・漫画家・作家で、「スノーマン」を書いた方です。きっとご存じの方のほうが多いですよね。絵本初心者の私は、スノーマンは知っていましたが書いた方のことは知らず。

とりあえずスノーマンで検索すると、出てきました、ジャニーズのスノーマンが延々と。行けども行けどもジャニーズのスノーマン…3ページ目であきらめて、「スノーマン 絵本」で検索。今度は一発でヒットです。写真が掲載されていました。素敵な英国紳士の印象です。もう1枚別な横顔の写真もありました。こちらは優しく微笑んでいて親しみやすい感じ。

本作は1998年度のブリティッシュ・ブック・アワーズで最優秀絵本賞を受賞しています。著者は本当に最近、先月8月9日に88歳でお亡くなりになられました。

今だからこそ…

腰を据えてじっくり向き合いたい作品。休日にゆっくり読みたい。

ふたりの会話のやりとりに、その時その時の時代の価値観が映し出されます。多くの市井に暮らす人々にとっての「戦争とは」「政治とは」「家庭とは」「死とは」…現在にも通じる普遍的なテーマが全編に盛り込まれ、重みのある物語です。

短いですが、広島の原爆についての場面も描かれています。日本人なのでやはりこの部分には目が留まりました。アイロンがけの手を休め、お茶を飲みながらエセルは言います。「まあ、すくなくともこれで戦争はなくなるわね」…「こんな爆弾とは戦えないでしょう」…「最初の1日目でみんな死んでしまうからよ」。

作品の全編を通して、夫婦の生活の中にさりげなく寄り添うように出没する黒猫(表紙向かって右下隅にも小さく登場)がいます。彼女ははふたりの生涯をどんな気持ちで見守っていたのでしょうか。

丁寧に書き込まれた夫婦の家や部屋の中も、当時の生活を映し出していて見応えがあります。

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