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一期一会の本と日常のおはなし

【くわずにょうぼう】ホントは食べ過ぎ女房

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口のある場所に決まりはないのです。

「くわずにょうぼう」

こどものとも〉傑作集

福音館書店 1974年4月1日発行)

再話 稲田和子  

画 赤羽末吉

 

どんなお話…

理想の女房の真の姿はなんでしょう?

 

物語の始まりが面白かったので引用します。

とんとん むかしが あったそうだ。

むかし、うんと よくばりの おとこが

ひとりで すんでいたそうだ。

おとこは やまへ しごとにいって、

「おらも にょうぼうが ほしいなあ。

よっく はたらいて めしを くわない

にょうぼうが ほしいもんだ」

と、いったそうだ。

 

この男は、なんて都合のいいことを。

もし今こんなことを言ったら

絶対お嫁さんは見つかりませんね。

 

でも、この男のところには

現われたんです、理想の女房が、後ろから。

しかも相手から

にょうぼうに してくんろ」とアピール。

当然ながら男はこの申し出を受け入れました。

 

そしてめでたしめでたし…のハズはなく

いつの世にも

うまい話には裏がある

ありました、とんでもなく恐ろしい裏が。

 

女房の真の姿は

おにばば

大きなからだ、強い力の鬼婆でした。

男の貯蔵庫から毎日

山盛りの米を握り飯にして

頭のてっぺんにある大きな口に

放り込んでいた鬼婆。

(さりげなく描かれていますが、この場面が一番怖かった!)

その光景を見てしまった男は

鬼婆に捕まって食べられそうになりますが…

 

読後の感想を…

無敵のようにみえる鬼婆ですが

意外な弱点があり、そこが心に留まりました。

 

鬼婆の弱点、それは植物。

菖蒲とよもぎが苦手だったのです。

 

鬼婆の圧倒的優勢にみえた物語ですが

この弱点を上手く利用した男の機転によって

形勢逆転、鬼婆が死んでしまうところで

物語は終わります。

 

・・・これは人間にとっては

めでたしな結末なのでしょうが

ひとつ気になることが残りました。

 

男を捕らえた鬼婆が山奥へ駆け戻ったとき

そこで鬼婆を待っていたのは鬼婆の子どもたち。

鬼婆にも家族がいたのです。

 

あの子どもたちは、もう決して戻らない鬼婆を

いつまでも待っているんだろうな。

これからどうやって生きていくのだろうか

と老婆心ながら気になりました。。。

 

本作は1974年に発行されたもの。

今から50年ほど前の作品です。

赤羽末吉さんの絵には、現在では得られない

古風な和の味わいがあります。

 

菖蒲とよもぎについて…

ちなみに菖蒲もよもぎ

古くから邪気を祓うとされ

医療用の薬草として利用されてきた植物。

 

5月5日の端午の節句に入る「菖蒲湯」は

今でも夏を丈夫に過ごせる風習として残っています。

実際に菖蒲には腰痛や神経痛を和らげる

効果が期待できる精油成分が含まれているそうです。

 

よもぎは「ハーブの女王」ともいわれるほど

ビタミンなど豊富な栄養素をもっています。

日本では雑草のイメージが強く身近な植物で

古くから草餅や草団子に使われてきました。

 

古来から知られている自然の知恵が

昔話のなかにも活かされているのだと

興味深く感じたところです。

 

独特の苦みのある旨味を思い出して

急に草餅が食べたくなりました。