まつぼっくりが落ちていると、なぜか拾いたくなります。
「ぎんのまつぼっくり」
(中央出版社 昭和59年10月 第1刷)
文 かながわさちこ
絵 なかむらゆき
「クリスマスは人間みんなの喜びの日」と
作者の金川幸子さんはあとがきで語っています。
そして、
「この絵本の物語は、ボヘミア(現在のチェコスロバキア西部の地方)の伝説です。
クリスマスとその地方独特の伝説が一つになって、また違った味わいの話が生まれ伝えられてきました。」とあります。
どんなお話し…
ボヘミアの山の中の貧しい村に、小さな小さな家が2軒並んで建っていました。
片方の家に少女ヒルダがひとりで住んでいます。
おとうさんとおかあさんが死んでしまって身寄りのなくなったヒルダ。
そのもう一方のお隣の家は大家族です。
6人の子どもたちと、おとうさん、おかあさん。とても貧しい暮らしぶり、食べるだけでも大変なこと。
けれど愛情深いおとうさんとおかあさんは話し合い、ヒルダを自分たちの子どもとして迎え入れることになります。
子どもたちは、7人兄弟姉妹になると大喜び。
ヒルダはちょうど真ん中くらいの年頃、ヒルダにも笑顔が戻ってきました。
サンタクロースとルーベザアルがダブルで登場…
ある夜、おかあさんはお休み前の子どもたちに「ルーベザアル」のお話をしてくれます。
高い山の上に住むルーベザアルは、心優しい人を見つけるとキラキラ光る宝物をくれるそう。
子どもたちは、夢中でお話を聞いています。
クリスマスが近づくと、ヒルダは大切な兄弟姉妹、心優しいおとうさん、おかあさん、そして村のみんなのことを思って祈りました。
「小さな小さなこの家にも、忘れずにサンタクロースが来ますように。」
ある日ヒルダがみんなのためにまつぼっくりを拾いにいくと…
幼いヒルダの清らかな祈りが、大きな喜びを運んでくれる、心温まるお話し。
あどけなくて素朴な絵に優しさがあふれています。
よく見ると、フェルトや和紙などの素材を切り貼りして制作されているようです。
その立体感のある絵が、独特の暖かい手触り感を出しています。
作者のあとがきは、こんな風に締めくくられています。
…最も近い人を愛することができないのに、遠くの見たことも話したこともない人を愛することは、とても、むつかしいことです。まず、最も近い人を大切にしましょう。そして、いつか、すべての人を隣人として愛することができたら、なんとすばらしいことでしょう。