だんごといえば、地元の老舗和菓子店のみたらし団子を真っ先に思い浮かべますが…
「おだんごぱん」ロシア昔話(福音館書店 1966年5月 第1刷) 訳 瀬田貞二 絵 脇田和
本書はロシアの民話で、日本でも50数年間読み継がれている有名なロングセラー絵本だそうです。
「だそう」、そうなんです、私は絵本をあまり読んでこなかったので今回がはじめて。
読み聞かせをするとみんな夢中になるという、子どもたちに大人気の絵本です。
どんなお話し…
むかしむかし、おじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんが、おばあさんにパンを作ってと頼みまさす。
おばあさんは空っぽに見える小麦箱をごしごしひっかいて、粉をかき集め「おだんごぱん」を作ります。
出来上がったおだんごぱん、じっとしているうちにさびしくなって、ころころと転がり外へ。
うさぎ、おおかみ、熊に食べられそうになりますが、おだんごぱんはそのたびに機転を利かせ歌を唄って逃げ出します。
つぎに出会ったキツネにも食べられそうになって…
口の上手いキツネにだまされる教訓的なお話しといわれていますが、
その通りと思う一方、こんなことも考えました。
アンハッピーなあっけない終わりは、おだんごぱんでなくても現実に起こり、大人になるにつれて人生で一度や二度やもしかしたらそれ以上体験することになるかも。
そんな苦い体験した大人が、これから生きていく子どものために、そもそもは食べるための存在であるおだんごぱんを通して、こんな終わりもあることをやわらかく伝えているようにも思いました。
絵本には、結末がシビアなストーリーも結構あると感じますが、読んで恐れたり悲しんだりすることで、現実に対する体力、免疫力がつくという面もありそう。
本書の結末はアンハッピーエンドのほかにハッピーエンドもあるのだとか。
おじいさんおばあさんが助けてくれて、ずっと幸せに暮らしたと。
けれど、おじいさんもおばあさんもいつかは旅立つときがくるでしょうし、いつまでもそのままだとおだんごぱんにもカビが生えそう…
あれこれ考えてみると、結末はこのままアンハッピーがいいのでは?
このお話しの魅力は…
ストーリーもさることながら、繰り返し繰り返しテンポよくでてくる、おだんごぱんが歌う唄に、好きな調子をつけて読むのも楽しい魅力のひとつです。
「ぼくは てんかの おだんごぱん。 ほくは、こなばこ ごしごし かいて…」
そして、サッと一気に描いたような絵。全体にじんわり優しい色合い。
おだんごぱんも他の登場するものたちも、可愛らしいとは言い難いけれどどこか愛嬌のある表情。それらが一層の味わいとなっています。
画家と訳者について…
画家の脇田和さん(1908~2005年)は、昭和期に活躍した日本の男性洋画家。
童話的で温かな印象を受ける作風が特徴です。
長野県軽井沢町にある脇田美術館には、200点以上の作品が展示されています。
訳者の瀬田貞二さん(1916~1979年)は、
「ナルニア国ものがたり」や「指輪物語」の訳者でもあります。
本書の原題はコロボック、日本語に訳すと「パン」。このタイトルを「おだんごぱん」と訳した訳者の方のセンスも素晴らしいです。
ちなみに、どなたかのブログによると、「おだんごぱん」を子どもたちに読み聞かせると、最後のシーンでドッと笑いが溢れるそうです。
アンハッピーエンドといわれていますが、無邪気な子どもには、楽しい終わり方なのかも。教訓云々は、私の深読みだったかな?