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一期一会の本と日常のおはなし

【したきりすずめのクリスマス】三浦綾子さんのクリスマス絵本

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日本の昔話、しばらく遠ざかっていましたが、また読んでみたい気持ちになりました。

「したきりすずめのクリスマス」

(ホームスクーリング・ビジョン 2008年12月初版) 

文 三浦綾子 

絵 みなみ ななみ 

英文 アーデン・ルイス

したきりすずめのクリスマス

したきりすずめのクリスマス

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三浦綾子さんは、「氷点」や「塩狩峠」を描かれた作家。

若いころから晩年まで、様々な大病と向き合いながら

「キリストの愛とゆるし」、「原罪」など

聖書のメッセージをテーマに

90あまりの作品を執筆しました。

どんな絵本…

日本の昔話「舌切り雀」をベースに、

そのお話しには続きがあった、という形で

キリスト教についてやさしく、

子どもにわかりやすいように創作したお話しを、

夫・三浦光世さんの監修のもとに、絵本化したものです。

 

元々は、1981年北海道旭川市内のキリスト教連合会からの依頼で

旭川市民クリスマス劇の台本、戯曲「珍版舌切雀」として執筆されました。

絵本になったことで、より親しみやすくなった点も。

 

絵のなかの雀たちはとても可愛らしく描かれています。

 

優しいおじいさんが訪れた雀のお宿では、

クリスマスのお祝いの会が開かれていました。

色とりどりの着物を纏った大勢の雀の子ども聖歌隊

聖句を暗唱したり

讃美歌を歌ったり

クリスマスの喜びが素直に伝わる場面です。

 

どんなお話し…

みなさんご存じの昔話「舌切り雀」には、

優しいおじいさんと意地悪で欲の深いおばあさんが登場。

 

 

「舌切り雀」は、欲の深いおばあさんが重いつづらをもらって開けてみたら、

たくさんのお化けが出てきて懲らしめられるところで終わっています。

 

ところが、この絵本はそこからが本番です。

つづらのお化けにおばあさんが慌てふためいていると、

見知らぬ人物が現れ、おばあさんを助け起こしながら、

お化けは「あなたの悪い心の姿だ」と諭します。

 

白い服に青いローブを身につけたその人物こそ、イエス・キリストです。

 

おばあさんが今までの行いを悔いていると、

イエス・キリストはその罪を代わりに背負ってくれると言います。

いじめっ子の男の子も、人殺しの男性も、

イエス・キリストの前で悔い改め、許しを受けます。

 

しかし、おじいさんはどうかというと。

自分はなにも悪いことをしていないと思っているおじいさん…

三浦綾子さんの思い…

…わたしはやはり、もっともっと子供たちによい童話を与えてやりたい。特に心に沁みとおる物語を。よく「時代がちがう」とか、「今の子供たちはそんなものは好まない」などと聞くのだが、子供たちの魂は、大人が考えているより、はるかに柔らかく、みずみずしく、美しい夢を吸収できるものなのだ。

と子どもたちへの思いを記しています。(三浦光世さんによる本書あとがきより)

 

この絵本のなかでイエス・キリストは言います。

おじいさん、世界中に全く正しい者は、ただの一人もありません。

 

なぜなのか。

 

おじいさんには、自分の罪に気がつかないという、

最も重い罪「傲慢の罪」があることを、

子どもにもわかりやすく伝えてくれているお話しです。

 

クリスマスの、その本来の意味をあまり気にしたことがなかった私、

日本の昔話に織り交ぜられたこのお話を、とても興味深く読みました。

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