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一期一会の本と日常のおはなし

【ぶすのつぼ】あま~い誘惑?日本の昔話

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食いしん坊もほどほどに。

「ぶすのつぼ」

福音館書店 2013年1月 月刊「こどものとも」発行

 2017年4月 第1刷) 

再話 日野十成  

絵 本間利依

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どんな物語…

本書の英題は「THE POT OF POISON,”BUSU”

「ぶすという名の毒の壺」というところでしょうか。

こちらだとなんとなく想像できます。

 

美味しい甘~い水飴を貰った和尚さん

大きな壺にいっぱい入っているのですが

独り占めしようと思いつきます。

 

寺にはたろぼうじろぼうという

まだ幼い二人の小僧がいますが

分けてあげるつもりはないようです。

 

部屋でこっそり舐めていると

掃除に来た小僧さんたちに

その姿を見られてしまいます。

 

慌てた和尚さん

たろぼうじろぼうにとんでもない言い訳をします。

壺の液体は「ぶす」といい

大人が舐めると薬だけれど

子どもが舐めると毒で死んでしまう、と。

決して壺に触らないよう言い聞かせますが…

そんな怪しい説明されたら

ますます気になりますよね。

きっと嘘をついた和尚さんの態度も変だったでしょう。

キョドってた?

子どもはそういうの、見逃しませんよ~

 

和尚さんの留守中にたろぼうとじろぼうは

壺を探し出すと、水飴を全部舐めてしまいました。

 

どうしよう、怒られる?

 

嘘には嘘でお返し、でしょうか。

たろぼうは和尚さんに怒られないように

大胆不敵な妙案を思いつきます。

 

えっ!それ、やっちゃうの?

たろぼうの計画は上手くいくかな?…

外出から戻った和尚さんには

衝撃の光景が待っていました。

愕然とした和尚さんでしたが、

しばし考え、ちょっと大人げなかった自分を

反省するにいたりました。

 

たろぼうの首尾は上々、おとがめなしで決着です。

子どもを甘く見てはいけません。

 

画家の本間利依さんの水性木版画の絵は

素朴で古風でありながら

小僧さんの表情が生き生きとしています。

小僧さんのウソ泣顔がリアル。

現在入手困難ですが

図書館や古本店などで見かけたら

ちょっと手に取ってみてくださいね。

ところでなぜ「ぶす」…

「ぶす」について調べてみると

この絵本の物語の原型にたどり着きました。

 

「ぶす」とは「附子」のことで

狂言演目のなかでよく知られる曲目のひとつです。

 

さらに遡ると

13世紀鎌倉時代の仏教説話集に同系統の話があり

日本各地の民話にも

甘いものが砂糖だったり

小僧のやったことや終わり方が違っていたりしますが

貴重な食品を毒と偽って壺に隠すお話があるそうです。

 

さらに「附子」という言葉は、

トリカブトの別名でもあります。

トリカブトは日本三大有毒植物のひとつ。

漢方薬や毒として用いられますが、「附子」は

漢方薬などの生薬としては「ぶし」

毒に使うときは「ぶす」と呼ばれるそうです。