今週読んだ2冊のご紹介です。
1冊目は絵本じゃないんですが、児童書でもなさそうですが、若い人たちに向けた本です。
「ほんとうのリーダーのみつけかた」
著者:梨木香歩
(岩波書店 2020年7月10日 第1刷発行)
本書「ほんとうのリーダーの見つけ方」は、2015年4月ジュンク堂書店池袋本店に於いて著者の梨木香歩さんにより若い方々向けに行われたトークセッション「「どう生きるか」をどう生きるか」の講演録を文章化したものを中心にまとめられています。そしてコロナが蔓延し閉塞感に満ちていた2020年に刊行されました。
このトークセッションは、著者の書いた「僕は、そして僕たちはどう生きるか」の文庫化にあたり企画されました。 この作品は、著者が「初めてトライするハウツー本のような気持で書いた本(本文より抜粋)」だそう。
「僕は、そして僕たちはどう生きるか」を理論社のウェブページに連載開始したのが2007年。本書「ほんとうのリーダーのみつけかた」は、著者がそのころから危惧していた世の中の変化、歪さ、きな臭さにどう向き合っていったらよいのかをテーマに、とてもわかりやすい文章で書かれたものです。
同調圧力や人間の群れる習性について
本当のリーダーとは誰のことか
自分との向き合い方とは
など、見ずに済んだら楽かもしれないですが、大変でもスルーしないで生きてほしい事柄について丁寧に掘り下げられています。
2024年の今、本書が刊行されてから4年が経ち、その間に地球上で起きたこと起き続けていることを考えると、著者が危惧していたことは益々強さを帯びて私たちの生活に迫っているように思えます。
何もできず回避不能かとも感じる昨今でしたが、本書を読んで、たとえ不可逆だとしても投げ出すことは違う、諦めない気持ちだけでも持ち続けていたら、僅な明かりを見出すきっかけになるのではないかと思うに至りました。
小一時間もあれば読み終わってしまう文字量ですので、大人の方もお試しに読んでみてはいかがでしょうか。もし文中に心に刺さる部分があったら、若くなくてもまだまだ見どころがある、のかもしれません。
もう1冊は、目に優しく心に温かい王道絵本
「キツネのフーくんと風の郵便屋さん」
作:葉山祥鼎
絵:葉 祥明
(登龍館 2015年10月21日 第1刷発行)
作者の葉山祥鼎さんと画家の葉 祥明さんは実の兄弟。弟の葉山祥鼎さんが現実に体験した野生のキツネとの出会いをもとに創作した童話に、兄の葉祥明さんが絵を描いた、兄弟はじめてのコラボレーション絵本です。
物語の舞台となっている阿蘇の草原や有明海は、ふたりにとって大切な思い出の地。幼いふたりはこの土地で共に遊び楽しい時間を過ごしたそう。
葉祥明さんの心が伸びやかに自由に開放されていくような絵と、キツネのフーくんが風の郵便屋さんに手伝ってもらいながらイルカに会いにいくという夢がいっぱい詰まった物語は、最初から最後まで心が晴れ晴れと呼吸するような気持ちになって読みました。
フーくんは自分の住んでいる野原も愛しているし、自分の知らない世界にも好奇心旺盛。晴れた日にやってくる風の郵便屋さんが話してくれる世界各地の様子を聞くのを毎回楽しみにしています。今回風の郵便屋さんが話してくれた楽しいイルカたちに、フーくんはどうしても会いたくなって…
キツネのフーくんと一緒に、野原の真ん中でたたずんだり、大空の風に乗って大地を見下ろしたり、イルカの背びれにつかまって海の中を泳いだりして、自然遊泳を堪能してください。