12月はなんといってもクリスマス。
数々出版されているので、多彩な作品に出合うよろこびがあります。
まず1作目は、あのターシャ・テューダーさん母子の作品です。
「こねこのクリスマス」The Christmas Cat
作:エフナー・テューダー・ホールムス
訳:辻紀子
(いのちのことば社フォレストブックス 2006年9月25日発行)
娘のエフナーさんが物語を書き、母であるターシャ・テューダーさんが絵を描きました。原作は1976年に発行されています。
クリスマスの前の日のお話。主人公はこねこ。
キジシロ(キジトラ柄に白いハチ割れ)の、みなさんもきっとどこかで見かけたことがあるのでは?と思える、ご近所を闊歩していそうなタイプの子猫です。
そんなこねこが冷たい風の吹きすさぶ森の中をさまよっています。迷子?いいえ、そうではなかったのです。こねこには、辛い過去がありました…
ターシャ・テューダーさんの柔らかい筆使いには、動物や木々や風にさえも慈愛の籠った温もりを感じます。自然をとても愛し、自然と共に生きた方だからこそ描ける味わい深いイラスト。
それにしても、娘さんとの共作なんてステキ~
こねこの辛い過去は、私たち人間が恥ずかしくなりガッカリしてしまう原因で起こるのですが、クリスマスにはこの世界に存在するすべてのものたちに奇跡と祝福がもたらされ・・・人間の良い面悪い面も映し出したストーリー展開となっていて、印象深く読み終えました。
次の作品は、ちいさなちいさなもみの木に舞い降りたクリスマスの奇跡です。
「ちいさなもみのき」
文:ファビエンヌ・ムニエ
絵:ダニエル・エノン
訳:河野万里子
(ほるぷ出版 2006年9月30日 第1刷発行)
ある町の丘の上に生えていた小さなもみの木が主役です。この小さなもみの木の将来の夢は、遠くに見える大きなもみの木たちのように立派なもみの木になること。けれどある日、トラックから降りてきたおじさんにシャベルで掘り起こされ、植木鉢に入れられると人々が賑わうデパートの前に連れて行かれてしまいます・・・
全体にふわりと軽く明るく進んでいくイラストとストーリーで、絶体絶命のピンチか!と自ら観念した小さなもみの木にも大きな大きなクリスマスの奇跡が訪れる結末となっています。
幸せはどこからやってくるかわからないものです。クリスマスにぴったりのホッとするハッピーエンドストーリー。
ただ…主題とはずれていると思いつつ、私はさり気なく描かれているトラックに乗せられた他のもみの木たちの行方に、少し胸が痛みました。
人間の喜びのために役立って生涯を終えていくものたちがこの世界にはどれほどいることか。そのことに、心から感謝しなければならないとも感じたお話でした。
本日最後の3作目は、飛ばないゆきだるまくん。
「ぼくのゆきだるまくん」
文:アリスン・マギー
絵:マーク・ローゼンタール
訳:なかがわちひろ
(主婦の友社 2011年11月30日 第1刷発行)
登場人物は主人公の少年だけ。少年の心の声が文章となって物語が進みます。
それは、落ち葉が舞い散る秋から雪が降り積もる冬、そして春が来て夏を迎え、再び秋から冬へと巡る一年のお話。
少年は積もった雪で、「ゆきだるまくん」を作ります。口をつけて目と鼻をつけて、手もつけてあげたあと、自分の被っていた赤い帽子を被せてあげました。
「ゆきだるまくん」はただずっとそこに佇んでいるだけですが、少年にとっては大切な存在になっていきます。けれど、だんだん季節が春へと向かって暖かくなると、ゆきだるまくんは姿を消してしまいました・・・
少年は思います、「ゆきだるまくんはきっとどこかにいる」と。雨になったり窓ガラスについた水滴になったり?
誰が少年に伝えたのでしょうか、少年はこう思っています。
たいせつにしたものは、なくならないんだって。
ちゃんと どこかに いるんだって。
少年はゆきだるまくんに再び会うことができるでしょうか。
クリスマスの夜には、今傍らにはいなくてもきっとどこかにいてくれる、どこかからあなたを見守ってくれる大切な存在に思いを馳せてみてはいかがですか?