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一期一会の本と日常のおはなし

【野うさぎのフルー】ひとりぼっちの野うさぎの絵本

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野に生きるとは、こういうこと。

「野うさぎのフル―」

(童話館出版 2002年12月 第1刷) 

文 リダ・フォシェ  

絵 フェードル・ロジャンコフスキー 

訳 編 いしい ももこ

どんなお話…

主人公の野うさぎの名前はフル―

フル―の過ごす春夏秋冬そして春初夏

淡々とした文章で綴ります。

その静かな語り口が

なおさら心に響く内容となっています。

 

ものがたりのはじまりを…

 フル―は、ひとりぼっちになってしま

った野うさぎです。

 おとうさんは、きつねに食べられてしまい

ました。いもうとは、ふくろうにさらわれま

した。おかあさんは、そういうことのあった

あとも、一しゅうかん、フル―におちちをの

ませ、かわいがってくれましたが、ある日、

どこかへいってしまいました。…

淡々としていますが、最初から厳しさを感じます。

 

野うさぎが子うさぎの面倒をよく見ないのは

普通のこと、野うさぎのきまりなのだ

と話は続きます。

 

野うさぎは小さなころから

ひとりで生きていく宿命です。

 

神様からもらった三つの贈りものを

精一杯使って生きていくのです。

その三つの贈りものとは

かくれみのと、魔法の耳と、七里ぐつ

 

フル―もまた三つの贈りものをたずさえて野原へ。

外敵から目立たないようにかくれみのを使い

安心できる音とできない音を魔法の耳で聞き分け

夜は七里ぐつで畑や林をぴょんぴょん跳ね探検

 

ある朝ひとりだったフル―に友だちができます。

同じ野うさぎの女の子キャプシーヌ

ふたりは麦畑や草原を自由に駆け回り

楽しい時を過ごしますが

 

ある秋のおだやかな朝、一発の銃声が響き

大きな猟犬に追われたふたりは離れ離れに

 

やっとのことで逃れたフル―は

キャプシーヌを探しますが…

美しくも厳しい自然の中で生きるフル―

 

冬になり、畑が雪に埋もれると

なかなか食べものを見つけれれません。

 

それでも木の皮や実を食べて懸命に生きるフル―。

 

・・・やがて雪解けの日が訪れ

若草の揺れる春がやってきました。

フル―がうれしくて跳ね回っていると

そよ風が懐かしいにおいを運んできました。それは…

 

野うさぎの特徴を見事に捉えた

甘すぎないイラストも是非じっくり見てください。

この絵本について…

フランス語で書かれた原作が

出版されたのは1935年のことです。

原題の「froux le lièvre」はネットの翻訳で

直訳すると「うさぎを怖がらせる」。

 

主人公の名前のフル―「froux」には

「怖がらせる」という意味が隠れているのかな?

確かに読んでいる間

淡々とした文章のなかに

いつもどこかスリリングな気配を感じました。

 

それは

自然の中では常に身を守る構えが必要だと

感じたからだと思います。

 

ときにはきつね、ときには人間。

 

ちなみにもうひとりの野うさぎ

キャプシーヌ「Capucine」は

キンレンカ金蓮花ナスタチウム)の意味。

花言葉は「困難に打ち勝つ」。

神様からの贈りものを駆使して

困難を生き抜くフル―とキャプシーヌの姿が

胸に迫る絵本です。