先日の大きな事故のことで、「群衆がある程度密になると、冷静さが低下して自分たちでは制御不能になる」と専門家が述べられていました。
「みんなの世界」(岩波書店 1953年12月 第1刷) 文・絵 マンロー・リーフ 訳 光吉夏弥
どんな内容?…
シンプルでユーモラスな絵の表紙に、小さな子ども向けの可愛らしいお話なのかと想像して、「癒されたい」と読んでみることに。開いてみると、想像はしっかりはずれていました。この本は、
「大勢の人が一緒に住んでいるみんなの世界をしっかりと築くには?」(作品の紹介文より)と書かれているように、いろいろな国のたくさんの人が住むこの世界で、
規則(ルール)とは何か、なぜ規則が必要か、規則を作るにはどうすればよいか、などを日常生活の中のいろいろな具体例を用いて、子どもにわかりやすく説明しています。
一昨日「としょかんライオン」で、きまりについて考えたり調べたばかり。これもご縁。
お話しの流れは…
もしこの世界に自分ひとりしかいなかったらどんな感じか、想像するところからはじまります。
そして、実際はひとりではなく、この広い世界にはたくさんの人が住んでいること、
その世界中のみんなが楽しく暮らしていくためにはどうしたらいいかを考えていきます。
規則の大切さを、10人の子どもの集団が日常で体験する具体的な出来事で、面白おかしく説明しています。
10人のうちの1人は、自分勝手でわがままな「おらが」くん。(英語ではJustme)
どんな困ったことが起きるでしょう。
野球、図書館、伝染病、自動車運転など例えは多岐にわたります。
話が進むにつれて、読者は規則がなぜ必要なのか、自然と理解できそうです。
次に、では規則(法律)を作るためにはどうする?について考えます。
それは選挙に参加すること。投票によって、法律を作る人を選び出すこと。選挙の仕組みと権利について、ここで詳しく解説されています。
次にテーマは働くということに移ります。
働くことは、自分のためであり、みんなのためでもあります。
自分たちの支払った税金と、その税金を給料にして働く人たちについて解説していきます。
最後に、こんな人とは一緒にみんなの世界を築けない、10人の困ったタイプの人たちが紹介されていました。
「どろぼう」(A thief)
「うそつき」(A liar)
「がきだいしょう」(A bully)
「よくばりや」(a Greedy)
「なまけもの」(a Lazy)
「いやいやさん」(Almost just a WON'T)
「のんきや」(This simple-minded creature)
「フワフワさん」(a Flighty)
「あまのじゃく」(never agrees with anybody)
「がんこやさん」(a Stubborn)
著者とタイトルについて…
著者は、1905年アメリカ合衆国ボルチモア生まれの児童文学作家。代表作は、戦うより花を愛する闘牛が主人公の「フェルディナンドの物語」。1976年逝去。
この本の原題は「FAIR PLAY」、書かれたのは1939年ですから、およそ83年前になります。日本で翻訳されたのは1953年が最初。そのため、内容に、やや現在にそぐわない表現や表記もあるようです。
けれど、この世界はみんなの世界であり、大勢の人たちが快適に生活できる世界を築くために必要なことは、今も昔も同じです。
原題のフェアプレイ、意味は「正々堂々とした試合態度」や「公明正大な態度や行動」。もちろん大人ならみんなご存じかと思いますが、意味を知ってるだけでなく、実行に移さなければなりません、より良いみんなの世界を築くために。