コロナ禍の外出自粛でハマったもののひとつが、「鬼滅の刃」。だいぶ遅ればせながら、TUTAYAで13巻まで借りて目を痛めつつ一気読み。最終巻は発売日に書店で並んで買いました。
「妖怪がやってくる」(岩波書店 2021年7月 第1刷) 著者 佐々木高弘
「ジュニスタ」の本…
ジュニスタとは、岩波ジュニアスタートブックスのこと。中学生が自分の可能性を広げていくためのシリーズ、新しい世界を知り、興味や関心を広げることを応援するシリーズだそうです。中学生ではないけれど、可能性を広げたい。
妖怪とは、なんなのか。
本書は、妖怪がはじめて記録に登場した宝亀8年(777年)の奈良時代から、現在のアニメ「鬼滅の刃」や「妖怪ウォッチ」に至るまで、いつどこでどんな姿で何をしたか妖怪を様々な視点から考察しています。
妖怪はどこからくるの?…
本書によるとどうも「根の国底の国」といわれるところからやってくるようです。これは言い換えれば、「黄泉の国」「死者の国」とも呼ばれるところです。
しかも、どのようにしてやってきたか。古くは東海道や山陰道など人が整備した交通機関を通ってやってきたそうです。空を飛んで、とか、地中からヒョッコリ、とかではなかったんですね。
妖怪に対する人の向き合い方も時代とともに変化していきます。
古代・中世の時代には、陰陽師 安倍晴明が呪術を使ってそうしたように、妖怪は退治する対象でした。
ところが徐々に様子が変わり、現代になると「オバケのQ太郎」や「ゲゲゲの鬼太郎」のような身近な存在となります。
さらに「夏目友人帳」では癒しの存在にまで変化、「妖怪ウォッチ」でついに友だちとなるのです。
考えてみると、「夏目友人帳」や「妖怪ウォッチ」が流行ったころの日本は、今よりのんびり平和だったような…
妖怪はいつ現れるの?…
このあたりの筆者の考察が、私は一番面白かったです。
著者は数多くの昔話や伝説から、「多くの伝説で人々は、時代の変わり目に、居住空間と自然空間の境界で、妖怪をみていることがわかりました。」と述べています。
その例として、「ヘンゼルとグレーテル」や「となりのトトロ」を取り上げて解説していることも興味深いです。
さて、本書に目を通し終えて、ふと。
この数年間は、これまで体験したことのないような困難な出来事が続いており、著者の言うところの「時代の変わり目」とも言えるような気がします。
するとこれから、「妖怪」が現れる?…いやいや、もしかしたらもうすでに現れている?