絵本や児童書など子ども向けといわれる本を読むようになって、1カ月ほどになります。
読めば読むほど、その奥深さに感動しています。
もっと早く出会いたかった…と惜しい気持ちもありますが、とりあえず今だって出会えないよりは出会えてよかった。
子どもコーナーの枠を越えて、大人にも読まれてほしい作品があります。
今日の本もそのひとつ、
「夕ごはんまでの五分間」(偕成社 1996年7月 第1刷) 作者 イヴァ・プロハースコヴァー 画家 ヴァーツラフ・ポコルニー 訳者 平野 卿子
家族のあり方がテーマのお話しです…
ママが夕ごはんの準備をしています。あと5分でできるそう。娘のバベタはパパに、ごはんを待っている間の5分間でできるお話しをしてほしいと頼みます。
パパが話してくれるのはママとの出会いからのストーリー。
ここまで読むと、ハッピーなふたりの馴れ初めかと思いますが、ひとつ変わっていることが。パパと出会ったとき、ママのおなかはすでに大きかったのです。
児童書のスゴさ…
本書には重いテーマが2つ。
大人の小説なら、ひとつのテーマだけで長編小説が書けるのではと思います。
それが、この本では小一時間もあれば読み終える分量で描かれます。
文章は、簡単でわかりやすく、しかも選び抜かれた言葉で語られています。子どもにも感覚で伝わるような描き方。
読み手はいつのまにか、その重いテーマへの見方が変化していることに気づくのでは。
読み終わると、
血縁というこだわりを、軽々と一足飛びに越えていく様子と
バベタが生まれながらにそなわった障害に明るく向き合う姿を
ごく自然なもとのして受け止めている自分がいました。
私の固いあたまが…
するりと解きほぐされていきそう。児童書ってすごいですね。
この本が最初に発行されたのは26年前。
著者は1953年生まれ。プラハで育ち、1983年にチェコを離れる。はからずも先日記事にしたチェコにゆかりのある方。
訳者のあとがきの言葉が胸に響きます。
…家族というものを血のつながりにこだわらずもっと自由に、オープンにとらえる考え方にかえていくということは、広い意味でのよその人間、つまり人種や国籍のちがう人たちを受け入れることにもつながると思うのです。そしてそれは、島国に生きるわたしたち日本人にとって、とりわけ大切な課題ではないかと。
難民に関するニュースなどを見ると、現在もこの課題は継続中のように思います。
けれど、昨年のことですが、都会に住む知人の孫娘さんがこの物語とよく似た人生を歩んでいると聞きました。知人は心配していたけど、孫娘さんに言わせれば「今は普通のこと」と。先日も、とても幸せそうな近況を聞いたばかり。身近なところでの意識は、変わってきていると感じる出来事でした。
本書のタイトルと重いテーマにも軽やかに向き合うストーリーから、頭の中にこの曲がフッと浮かび上がってきました。